日本への旅行中に、ウクライナ将棋道場の支部長のイーホル・ストルメーツキーが、将棋用器の最も古い店の1つである平井碁盤店の店主・平井康彦氏と会った。 平井碁盤店の将棋界での歴史がどこから始まるのか知りたくなり、平井さんに簡単な質問に答えて頂きました。
1.自己紹介をして頂けませんか。
平井碁盤店、平井康彦(ひらいやすひこ)です。
平井碁盤店は1866年に囲碁将棋の専門店として創業し今年で164年目になります。平井碁盤店初代は平井亀吉という先祖だったと聞いています。
私は七代目となります。
2.何歳からどなたに棋具作りを習われましたか。
私は棋具作りはしません。
当店は六代目の父の代より主は商売の統括に専念し、棋具作りは職人が行うという完全分業制となりました。
ゆえに私は多少制作の知識はありますが現在棋具作りはしていません。
3.棋具には、どんな勉強が必要ですか。
棋具といいましても色々とあります。
碁盤将棋盤、碁石、碁笥、将棋駒等
それぞれの棋具の専門の職人がいます。
棋具作りをするなら、それぞれの職人に従事し教えてもらうのが普通です。
4.棋具作りに使う技術や素材は昔から今まで如何のように変わりましたか。
技術は機械の進化,使う道具,材料(素材以外の)の進化により制作時間が短縮され仕上がりも綺麗になりました。
素材は国産の材木が枯渇し輸入材がかなり増えました。
碁盤将棋盤に一番適している素材は日本産榧(かや)です。
ただ,この日本産榧は成長に大変な年月がかかるため大変高価となります。
碁盤将棋盤の素材として最も多く使われていたのは桂という材木です。
碁盤将棋盤にこの桂という材木が適していて榧より安価で作れることを発見し、この桂で碁盤将棋盤を作り始めたのは平井碁盤店三代目の平井醍次郎です。
その功績を称え平井醍次郎は昔「碁盤将棋盤の母」と言われたそうです。
ただ、その桂も既に枯渇寸前です。
5.将棋盤と囲碁盤の創り方はどのように違いますか。
将棋盤と将棋駒を創るには、どのくらいかかりますか。
碁盤と将棋盤の制作過程はほとんど一緒です。
盤の大きさマス目、(足付き盤の場合は)足の大きさ等細かい部分違う所もあります。
将棋盤,将棋駒を作る時間は一概に言えません。
原木の乾燥自体も材質,状況,時期,湿度等によりそれぞれ乾燥期間が違います。
駒も書き、彫り、彫埋め、盛り上げ等によりかなり違ってきます。
6.制作技術についての質問です。
将棋用品を創るとき、どんな道具をお使いになりますか。
棋具作り専用の道具がありますか。塗膜に何を使いますか。
専用道具はモチロンあります。将棋盤,将棋駒で道具は違います。
一般的にはなた、カンナ、のみ、小刀、目盛り道具等を使いあとは職人により
それぞれ独自の道具が使用されます。
塗膜には職人独自で作る塗料染料等がありますが、これは他人に教えることはしません。
俗に言う企業秘密ですね。
だれもが使う物としては目盛りの漆、仕上げの蝋です。
7.もっとも高級の材質は何だと思われますか。
お気に入りと言うか、やはり優れていて高級は盤は日本産榧、駒は日本産つげです。
この両素材が最高品です。
8.将棋盤・駒の価格はどのように決まりますか。
将棋用品の品質は何によりますか。
将棋盤を選ぶ方へのアドバイスがありますか。
価格は一般商品と同じく原材料、製作費、流通経費、販売経費、そして利益を考慮し決まります。
将棋用品の品質は基本原材料、制作技術だと思います。
将棋盤を選ぶ時は無理をしない程度材質のいい物を選んだほうがいいと思います。
9.作業の刺激になるものがありますか。
刺激になるのはうちが作った物がより多く売れた時ですね。
10.ご自分で将棋をお指しになりますか。
私は先代先々代から囲碁将棋はするのではなく知識全てをを覚えろ、と言われ育ったのであまりやらなかったし、生まれた時から目の前に将棋用品、囲碁用品に囲まれ育ったのであまりやりたくなかったですね。(笑)
11.平井碁盤店の製品はプロ棋士や日本将棋連盟の対局に用いられたことがありますか。
何度もあります。タイトル戦にも使われたこともあります。
ただ最近は不景気ゆえ経費節減で新しく搬入せず修理の依頼が増えています。
12.将棋盤の裏に四角い凹みがありますね。
それについて様々な説を伺いましたが、何のためにあるか、教えて頂けませんか。
盤裏面のぞくに言うヘソ、血だまりなどと言われる事もありますが音うけとも言います。
これは簡単に説明しますと、木材の習性を考慮し中央にくぼみを彫ることにより盤の狂い割れを防ぐ手助け及び乾燥を促す役目を担っています。
また音うけとも言う通り、打った時指した時の音響効果にも多少影響が有ると言われています。
インタビューに時間を割いてくださった平井さんに感謝します。❤️
「平井碁盤店」へいらっしゃいたくなった方は、ぜひこのリンクをご利用ください。
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